介護現場のハラスメントについて厚生労働省で『介護現場におけるハラスメント対策マニュアル』が掲載されています。

今回の記事では、こちらのマニュアルに掲載されていることを引用しながら、介護事業者や職員がハラスメントをどのように捉えているかについて、見ていきたいと思います。

<管理者から見たハラスメント発生の原因と考えられること>

こちらは管理者がハラスメントの原因をどう捉えているかについての、事業形態別の結果です。

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選択肢のどれもが該当しているように見えますので、それぞれ見ていただきたく思いますが、「利用者・家族等がサービスへの過剰な期待をしているから」と「利用者・家族等がサービスの範囲を理解していないから」については、管理者や担当責任者が、契約時や随所で本人や家族等に繰り返し説明していかなければならないことですね。必要であれば、関係者を巻き込んできちんとサービス担当者会議を開くなど、是正していくための対策は比較的想像しやすいかもしれません。

最近では、介護離職防止という社会の流れもあり、介護保険制度を家族の仕事と介護の両立のために使うという考え方も広がってきており、利用者本人のための介護を教育されている、私たち介護職と真逆の要求を家族にされることもあります。継続的な介護福祉サービスの意味をご説明していくことも大事になってきますね。

さて、難しいのは「利用者・家族等の認知症等の病気または障害によるものであるから」と「利用者・家族等の性格または生活歴」というところですね。病気や障害、性格、生活歴、に依存するものであるならば、ある意味“どうしようもできない”という思考停止に陥ってしまう可能性があるからです。 本当にそうなのかも含めて、こちらの原因が想定される場合は、きちんと「であるならば、どうすべきか」をチームで検討しなければいけませんね。

しかし、管理者へのアンケートでは、こうしたハラスメントを未然に防いだり解決に向けた課題として「ハラスメントかどうかの判断が難しい」という回答が上がっており、予防や解決の責任者としての管理者の苦悩が想像できます。

<ハラスメントの把握状況と相談状況>

次に見ていきたいのは、介護事業所がハラスメントをどの程度把握しているかという調査と、職員がどのくらい相談をしているかという結果です。

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上記は「事業者としてのハラスメントの発生の把握状況等」という結果で、管理者がどれほどハラスメントの発生を把握しているかというものです。

オレンジの「ハラスメントの発生を把握している」とする事業所別の回答が2割〜5割程度あります。前回の記事で介護現場の職員で利用者からハラスメント(身体、精神、セクハラ)を受けた人の割合は約4〜7割、家族等からは約1〜3割と言う結果がありました。そうすると、グラフの黒い部分の「ハラスメントの有無を把握できていない」を合わせて、職員がきちんと管理者にハラスメントを訴えられていないとも考えられます。または、訴えはあっても、管理者が「ハラスメントは発生していない」とグレーで回答しているように、組織でハラスメントとして認定されていないという可能性もありますね。

次は「ハラスメントを受けた職員の相談状況」という結果です。

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「些細な内容でも相談した」「内容によっては相談した」を合わせると6割〜8割の職員は相談ができていると言えます。一方で「相談しなかった」が1割〜3割いらっしゃることも気になる点です。

継続的に調査されているものではありませんので、この調査結果が多いのか少ないのか、または良い結果が増えているのか減っているのかはなんとも言えません。ただ、私の肌感覚でいうと、介護保険制度が始まった頃は、介護サービス自体が措置時代の福祉的イメージが強く、利用者や家族の権利意識や主張がそこまで強くなかったように思います。また、職員側も福祉サービスという観点が強い人や組織が多かったように思います。

現代は、一般産業でもハラスメントというテーマが注目されるようになり、少しずつ介護労働者の権利が大切な視点になってきました。また利用者側も複雑な課題を抱える世帯が増えてきたり、介護保険サービスのあり方が、家族のための介護離職防止で語られることもあります。ですから、総じて、介護におけるハラスメントは増えてきている、そして今後増え続ける課題なのではないかなと思っています。あくまでも肌感覚ですが。

皆さんの組織では介護のハラスメントはありますか。管理者やリーダーの方は、職員がハラスメントを受けているかどうか把握されていますか。職員の方は、それをきちんと組織に相談できているでしょうか。色々と考えさせられるテーマですね。

今日はここまで。また次回に続きます。