前回の記事までで、ヘルパーと介護職に関連する資格研修制度の変遷の前半を見てきました。訪問介護員という資格が登竜門となったこと、国家資格である介護福祉士の実務経験ルートに体系的な学びの機会となる介護職員基礎研修ができたことなどです。今回はその資格・研修体制が今現在どうなっているかという変化を見ていきましょう。  

<医療行為の一部解禁>  2010年前後になってくると、住み慣れた地域で出来る限り自分らしく生活し続けられるような仕組みとして「地域包括ケアシステム」の推進が本格的になってきました。これに伴う課題として、医療依存度が高い方が、喀痰吸引や経管栄養などの医療的ケアを受けられないことで、地域生活を継続できないということがありました。その為、様々な議論を経て、2011年には研修を受けるなど一定の条件を満たした介護職について医療的ケアの一部が解禁されることになったのです。

<介護の資格研修制度の一本化へ>  2013年にはいよいよ介護の資格研修制度が大きく一本化されました。  まず、下位資格である訪問介護員3級が廃止になりました。そして取得者が多い訪問介護員2級が「介護職員初任者研修」へ移行されました。  加えて、介護福祉士の手前の位置付けであった、訪問介護員1級と介護職員基礎研修が「介護福祉士“実務者研修”(450時間のカリキュラム)」へ一元化されました。そして、実務経験ルートの方は、介護福祉士を受験する際はこの実務者研修の修了が必須となり、体系的な学びと実務経験と国家資格がセットになるようになりました。  ただ、現場で活躍中の実務経験ルートの職員が450時間も現場を空けるということは人手不足の現場にとっては非現実的です。その為、この450時間の多くは通信教育によって代替できるなど、体系的な学習機会が保証されたかといえば、十分とは言えないという見方もできます。

<介護福祉士の上位資格>  さて、一方で介護福祉士の上位資格というもの出来ました。2015年に始まった「認定介護福祉士」です。こちらは5年以上の実務経験や600時間の研修受講する他、施設・在宅両方の介護経験、リーダー業務などの経験が望ましいとされています。想定される役割としては、介護職の指導、地域や他職種と連携する中核人材としてスタートしています。  まだまだ始まったばかりの資格制度で、養成者数も少ないですが、今後上位資格に見合う実践事例が報告されることが期待されています。

<裾野を広げる介護の資格>  さて、介護の資格制度が介護福祉士を中心に一本化されてきましたが、ここで2018年頃から出てきたのが、「生活援助従事者研修」です。こちらはヘルパーの仕事の中でも特に火事などを中心とした“生活援助”のみを主として担える資格です。初任者の方が不安に感じる身体介護などではない生活援助だけを担当して、訪問介護の仕事に慣れていただくことで、仕事の間口を広げ、ハードルを下げる狙いがあると考えられています。  また、「介護の入門的研修」という制度も出てきています。こちらは施設などでシーツ交換や傾聴など、介護に直接関わらない業務について、アクティブシニアなどに担ってもらおうとするものです。訪問介護員3級という下位資格を廃止しましたが、人材の量を確保しなければならない中で新たに作られた資格制度です。現場の人もあまり知らない資格が広がりつつありますので、いつか一緒に働く人がどういう資格を持っているのか、新たに介護を始める人はどういうルートがあるのか、色々と押さえておきたいですね。

 ヘルパーを取り巻く資格制度はこのように質と量の兼ね合いの中で変化してきています。資格制度としてはヘルパーも介護職も一本化されてきていることが見えてきます。今後キャリアアップを目指す人の道はもちろん、裾野を広げて多様な人材を受け入れる職業としても資格制度については知っておきたいですね。 今回の記事はここまでです。

参考引用 介護に関する入門的研修について https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000465981.pdf