さまざまな現場でご活躍される多種多様な介護職の方に、ただひたすらインタビューしていく「カイゴ録」。今回は、その第5弾です✨

今回の鞆(とも)さんは、カイゴ録 vol.1 の彩さんからバトンを繋いで頂きました。介護の最前線で働く鞆さんならではの濃いお話を聞くことができました。 それではどうぞ~🌟

鞆さんのプロフィール

鞆さん

鞆さん

関西の特別養護老人ホームでフロアリーダーを務める。カイゴ録 vol.1に登場する彩さんの上司でもある

自己紹介

けあ子

けあ子

最初に鞆さんの経歴について教えていただけますか?

鞆さん

鞆さん

専門学校を卒業後、今働いている介護施設に就職して、14年目になりました。介護業界には、「介護予防」にスポットライトがあたっていた時期で、健康に対して注目度が高くなっていたこともあって、今後を見据えて健康福祉科がある専門学校に進学したところからです。実習に行ったとき、ジムとか健康運動の指導とかよりも、介護のほうがおもしろそうだと思ったのが、介護に進んだ理由ですね。今の施設は、当時は新しくできた介護施設で、しかも家の近所にあったのでここで働いてみようと決めたんです。

けあ子

けあ子
なるほど。

鞆さん

鞆さん
スタッフはみんな系列病院と老人保健施設から引き抜いてきた人ばかりだったのですが、当時、同じ法人のその系列施設に手伝いにいくことがありました。そこはとても“古い介護”をしていたんですよね……。

けあ子

けあ子
古い介護って、どういうものだったんですか?💦

鞆さん

鞆さん
ハッキリ言ってしまえば劣悪中の劣悪でした(笑)。夜勤のときは1人で50人を診ていました。それを3フロア、つまり150人を3人でまわしていたんです。

けあ子

けあ子
ひぇっ……!!聞くだけで大変なのがわかります😅

鞆さん

鞆さん
そうですよね(笑)。しかも4点柵で身体拘束をしていました。ほかにもいくつか「え!?」と思うことがあって。まず、トイレは最高でも1日4回だけ。行きたいタイミングで、とかではなく定時で決まっていました。そして入浴ですが、みなさんをエレベーターの前にずらっと並ばせて順番に入浴させるんです。待っているあいだにトイレに行きたくなったおばあちゃんがいて、ぼくはイレギュラーだけど連れて行こうとしたんですよね。でも、連れて行こうとすると別の職員に怒られてしまいました。

けあ子

けあ子
ええっ(絶句)。話としては聞いたことがありますが、実際にそれを目のあたりにした方の話は初めてです(笑)💦

鞆さん

鞆さん
施設は違いましたが、そういった法人の系列施設から職員が集まっていたということもあって、最初は、介護がつまらなかったです。しかし、ここで僕は一人の上司に出会いました!

けあ子

けあ子
鞆さんの運命を変える上司の登場ですね✨ 一体どんな方だったのでしょうか?

鞆さん

鞆さん
とにかく熱い上司だったんです。「介護はこういうものだ」という原理を教えてくれました。三好春樹さんのことも、その上司から教わりましたね。その上司との出会いから、介護の面白さを感じる様になりました。

けあ子

けあ子
思い出深いエピソードは何かありますか?

鞆さん

鞆さん
あるときお風呂がきらいなおばあちゃんがいまして。スタッフは手こずりつつも無理やりお風呂に入れていたんですよね。その光景を見るのがとても辛くて……。見るのもいたたまれないというか。そんな時、上司が「これは入浴介助ではない、人体洗浄。その人が気持ちよくなってこその入浴介助だ」とみんなに言ったんです。この言葉に衝撃を受けました。

人体洗浄だ

鞆さん

鞆さん
ただ一方で、無理やり入れるしかないという面もありました。

けあ子

けあ子
そうですよね💦お風呂に入るのが嫌なおばあちゃんを、どのようにお風呂に誘導したのですか?

鞆さん

鞆さん
あるとき、過去の記録を見ていたら、おばあちゃんが「手紙が好き」だという情報を見つけたんです。そこで息子さんにお願いして手紙を書いてもらいました。「面会に行くから、お風呂に入っておいてくださいね」って(笑)。なんの脈絡もなく、ただこの一言を書いてもらった手紙をおばあちゃんに渡しました。

けあ子

けあ子
なんだか女ゴコロをくすぐるお手紙ですね☆

鞆さん

鞆さん
そこが工夫ポイントですよね。それを読んだおばあちゃんが、自分からお風呂に入って、浴槽の中で鼻歌うたって、楽しそうにお風呂に入っていたんです。それがもう、衝撃で(笑)!!

けあ子

けあ子
発想の転換ということですよね✨

鞆さん

鞆さん
この出来事を経験して、介護にハマっていったような気がします。

鞆さんとけあ子

けあ子

けあ子
上司の発言が響く人も少ない中、なぜ鞆さんは衝撃を受けることができたんでしょう?

鞆さん

鞆さん
やっぱり自分の中での“介護像”がぼんやりとあったのかもしれません… これを素通りして何も感じずに受動的にいたら、介護の仕事はできないという漠然とした感覚を持っていたのでしょうね。おばあちゃんを機嫌よく入浴させても、無理やり入れても自分の評価って全然変わらないわけですよね。入浴介助を1回しました、っていう事実だけ残る。「どのみち変わらないじゃん!?」というスタッフも実際いて、職員の中でも反応が二極化しました。

けあ子

けあ子
でもそこで鞆さんは何かを感じたわけですね!

鞆さん

鞆さん
劣悪な職場環境と上司の衝撃のひとこと、おばあちゃんの変化という3つが自分に響いたんだと思います。

鞆さんの「カイゴ録」、前編はここまでです。 中編は、鞆さんの今のお仕事、そして自分が上司という立場になってからのお話です。 リーダーとしての心構えや施設全体の理念の広めかたなど、介護の現場でなくても役に立つお話をたくさんしてくれました。その様子をお届けする予定です😊 お楽しみに!

次回予告