前回の記事では、サービスを利用する要介護者全体をどう総称するかについて見てみました。 とてもたくさんの呼称があり、法人事業所や、事業形態、個人によって様々であることが見えてきました。 皆さん自身と職場ではどのような呼称を使っていて、それにはどのような根拠や理由があるのか。 またはそこに違和感などはないのかなど、少し立ち止まって考えてみた方もいらっしゃるでしょうか。

さて、今回の記事では、「利用者さん一人一人を個別にお呼びする時にどのように呼んでいるか」について考えていきたいと思います。

例えば「介護花子さん」という方がいたとしましょう。

「①介護さん」「②介護様」「③花子さん」「④はなちゃん」

大きくはこんなところでしょうか。

皆さんの事業所は如何ですか。そして皆さん自身はどの呼び方をされていますか。

そしてもう一つ伺いたいのは、①〜④のどれかでお呼びしているならば、利用者さん全員同じように統一されていますか?誰かだけ②で誰かだけ④になっていたりしますか。もしそうならば、それはなぜでしょうか・・・

介護業界は2000年にスタートした介護保険制度をきっかけに、それまで、行政や準公共的法人に認められていた福祉サービスに民間の営利企業が参入できるようになりました。こうした民間企業は多くが一般産業界では当たり前の「お客様」という呼称と概念を持ち込みました。 おそらくですが、社会福祉法人や医療法人よりも株式会社の方が「お客様」と称することが多いでしょう。

こうした、法人ごとの価値観が入り乱れて、介護業界は進んできました。どれが良い悪いという話ではありません。法人ごとのスタンスであり、またそれを選択する国民の側に自由があるのです。

とはいえ、こうした総称については入り乱れつつも、利用者さん一人一人をお呼びする時の呼称は法人の中でもバラバラであるような気がします。 つまり、民間の営利企業でも④で呼ぶような方もいますし、社会福祉法人や医療法人などでも②で呼ぶような方もいます。

ここまでくると一体何が正しいのかますますわからなくなってしまいますね。 新規入職者が多い介護業界では、未経験の人が就職した現場で、先輩によって①〜④が混在していたら、「一体この業界は何が正しいのだろうか?」となってしまいますね。 必然的に「自分の価値観的に一番しっくりくる呼び方」「なんとなく一番違和感がない呼び方」「一番信頼ができる先輩の呼び方」「一番厳しい人に言われた呼び方」になっていってしまうかもしれません。 こうして、更に統一されない呼び方の連鎖が広がっていきます・・・

民活導入の2000年以降、ずっと繰り広げられてきている、呼び方や言葉遣い。 何が正しくて、何が正しくないのでしょうか。いえ、むしろ正しさというものがある領域なのでしょうか。

こうした、呼び方や言葉遣いについて次回、一つの見解を書いてみたいと思います。

それまで、是非ご自身や職場で使われている利用者さんの呼び方や言葉遣いについて、考えてみてください。