2021年6月12日18時より、「三大介護こそ尊厳を守るケア」ということで、三好春樹さんのセミナーを開催いたしました。

今回はその様子を、全5回にわたってお届けします!

実際の雰囲気を感じてみたい方、より詳細な話を知りたい方は、ぜひこちらの動画)をご覧ください!

5月6日には、「三好春樹と排泄ケアを考えるアウケアツアー」ということで、排泄ケアについてのお話をいただきましたが、今回は、排泄ケアに加えて、入浴ケア・食事ケアを含めた三大介護について、お話をいただきます。

〈#3の目次〉 ■食欲がないお年寄りへの向き合い方 ■「オムツ外し」を学会に ■個浴の介護量は、機械浴の6割?!

動画19:42

■食欲がないお年寄りへの向き合い方

私たちは、そういう特別な病理学ではなくて、生理学を根拠にします。私たちは普段どうやって食事してるだろうっていうと、西洋とそれ以外とで差がありますけれども、床に座る、あるいは椅子に座って、みんな前かがみで食事するというのが普通のやり方ですよね。実は生理学的根拠があって、これが一番誤嚥しにくい安全な食事の姿勢なんです。だから、老化や障害がある人ほど、この前かがみの姿勢で食べるということをしなきゃいけないということです。みんなでこういう姿勢で食事しようよ、ということを実際にやってみると、食事介助が必要だという人も、みんな食べるようになるわけですね。

さらに医療の世界は、おばあさんが食べないっていうと、食べられないっていう身体機能の問題だ、という風に捉えてしまいます。だけどね、食べられないはずはないんです。食べたければみんな食べるんですよ。私が見てると、食べないっていう人は、目がとろーんとして、「こんな体で人に援助までしてもらって生きててもしょうがない」と思って食べなくなるという感じなんです。私はこれを、「消極的自殺」なんて呼び方をしています。

私たちが普段食欲がない、食べたくない、と思った時にどうしているか?ということを、お年寄りにちゃんと適応しようよ、ということです。点滴や鼻腔栄養なんかじゃなくて、まず1番に「出前をとろう」、2番に「外食しよう」、3番に「会食しよう」、という方法論です。 そういうことをやって、それでもダメなら、点滴を使うことがあったって構わないけれども、それを工夫する前に特別な方法を施して手足を縛るなんてことをやったのでは、それは何のために介護という職種を作ったのかわからないじゃないか、ということになるだろうと思っています。

■「オムツ外し」を学会に

さらに、排泄ケアですね。未だに、入院した途端にオムツにされる人がいっぱいいるわけですが、私は「生活リハビリ講座」という講座を30数年間やって、それで飯を食ってきました。去年はオンラインでやって、今年もなんとか、オンラインと会場と、計画していますが、その講座の最初のキャッチフレーズというのがあります。それは、「リハビリやるよりまずベッドの足を切れ」というものです。

ベッドが高すぎるんですよね。医療者に都合のいい高さになってましたから、ほとんど腰の高さくらいにありました。でも、ナイチンゲールが大昔にですね、「患者さんのベッドは高すぎてはいけない、一番ベッドから離れやすいベッドが良いベッドだ」と言ってるんですよ。私たちが訴えたことと、便利な機能も出来たおかげで、今はかなり低く設定されるようになりました。

足をちゃんと床につけて立ち上がって、伝い歩きでもいいからトイレに行こうよ、それが無理ならベッドサイドのポータブルトイレに入って、オムツの中じゃないところに排泄をしようよ、という私たちの気持ちを込めた言葉なんです。オムツ外しというのは、安静看護から脱却した介護独自の方法論だということで、それを象徴的な意味で「オムツ外し学会」という学会にして、実践報告をみんなでやろうよということで始めました。

■個浴の介護量は、機械浴の6割?!

そして、入浴ケアですね。オムツ体験と同じように、もう一つやってほしいのが特浴体験です。上を向いて寝たままの姿勢でお風呂に入るなんて、さぞ楽だろう、と思ったら大間違いで、あんな怖いお風呂はありませんね。お風呂はリラックスするために入るわけですよね。やれやれって力を抜くと、筋肉は水より軽くなりますから、お湯の中にあるお尻も足も浮くんです。外に出ている頭だけが沈もうとしますから、もう怖くてしょうがない。

このお風呂を見て、人生最後のお風呂がこんなお風呂でいいのか、疑問に感じて、アルバイト先の機械浴を破壊したというのは、駒場苑という施設の施設長をやっている、坂野さんという方なんですが、今その駒場苑では機械浴はなくなりましたね。家庭用のお風呂でみんな入れています。

介護量が増えるだろう、と言う人がいるんですけど、20数年前に広島の特養清和園という施設で、ここのスタッフと一緒に、機械浴をやめて普通のお風呂にほぼ全員入れる、ということをして、それをデータ化しています。ぜひ私の「生活とリハビリ研究所」というところのホームページに、「入浴ケアの現在」という論文がそのまま全部のっているので見てみてください。結論でいいますと、機械を使った時の労力を100とすると、なんと60になるんですね。お年寄りの自立度が上がる分、労働量が下がるんです。

それこそ動作の生理学で、日頃私たちはどうやってお風呂に入ってるか、どうやって出てるかということを観察してみればいいわけで、力の方法とタイミングさえ合っていれば、力を貸すだけでほとんど自立できるんです。

そして、こうした生理学を根拠にした食事・排泄・入浴を実現することが、実は認知症ケアの基本中の基本なんです。認知症の人も落ち着いて、問題行動が本当になくなるんですね。その理由は明快で、認知症の人の行動原理は、フロイドという人が言った「快・不快の原則」あるいは「快楽原則」なんですね。

次回は「認知症のお年寄りはなぜ『問題行動』と呼ばれる行動を起こすのか」です。ぜひ合わせてお読みください!