傾聴って介護現場で大事なコミュニケーションの一つですね。
でもうまくいかない……できない……
よく『耳で聞く(hear)のではなく心で聴く(listen)』なんて字面で説明しているテキストなんかがありますが、わかりません。
小学生に上記のように説明したところで、心で聴く『傾聴』の意味なんて伝わらないですよね!
今日は『傾聴とはこうだ!』という記事ではなく、傾聴“ではない”聞き方を見ることで傾聴について考えてみたいと思います!
さて、傾聴が心で聴く聞き方だとすると、傾聴でない聞き方は身体のどこで聞いているのでしょう?
はい……
それは“頭”で聞いているのです。
つまり、一見相手の話を親身になって聞いているようですが、心ではなく、頭で聞いている状態です。
具体的には、自分の価値観や物差し、物事の見方(これらを総称的にパラダイムと言いますが)に当てはめながら相手の話を聞いている状態です。相手の話を聞きながら頭の中では解決策や結果論、自分の意見を考えているのです。
例えば……
Aさん『昨日息子が約束した時間に迎えに来て、一緒に食事へ行こうって言ったのに仕事で遅れて三時間も待たされたのよ…』
介護職『そうですか…でも仕事なら仕方ないですね』
介護職『でも遅れてもお食事自体は行けて良かったですね』
介護職『三時間待つくらいなら日を改めても良かったですね』
………
三つの答えは全て利用者さんの話の中にある“想い”ではなく、話した“事実”を介護職のパラダイムに当てめて介護職の考えや意見として述べてますね。
私たちは意外に上記の言葉に近い会話をしているのではないでしょうか?
頭で聞くと、相手との表面的な会話はできますが、相手の深い想いや隠れた気持ちに触れることはできません。
あなたが頭で話を聞いている限り、相手はあなたと会話はしていても自然に会話が続かなくなり、あなたに心を開かなくなります。
つまり信頼関係が築けないのです。
どうしても相手の言葉に対して適切な返答ができず、自分のパラダイムに当てはめてしまいがちな時はわざわざ返答しようとせずに質問してみたら良いのです。
『三時間待たされてどんな気持ちでしたか?』
『三時間待たされた後の食事はどんな感じでしたか?』
利用者さんは三時間も待たされて最悪な気持ちだったかもしれません。
逆に待たされたけれども、息子さんとの食事は嬉しかったかもしれません。
相手の気持ちは相手の中にあることが真実なのです。
しかし、あなたのパラダイムに当てはめた返答をしたら、それは途端に相手ではなくあなたの考えや気持ちになってしまうのです。
まずは相手の話を頭で聞いてあなたの意見や考えを言う、または言わなくとも、頭の中であなた自身の意見や想いを考えながら聞くのは一旦やめましょう。
あなたのパラダイムを横に置いておいて、相手が何を言わんとしているか(事実)を聞くのではなく、相手が分かってもらいたいこと(想い)に焦点を当てて聴いてみてください。
これが傾聴への第一歩です。
※本稿は、金山峰之さんからの寄稿記事です。2009年7月30日に、ご自身のブログ「介護の専門性新提案」において掲載した内容を、一部編集のうえ掲載しています。