介護情報誌「Bricolage」(七七舎)2018年新年号に掲載された「介護現場から—駒場苑の入浴改革(坂野悠己)」全文を3本の連載記事でご紹介します!

坂野悠己(さかの・ゆうき) 東京都・総合ケアセンター駒場苑 施設長補佐(現施設長) 学生時代にアルバイトで偶然入った特養ホームで経験した劣悪な介護への憤りを源に施設改革に取り組む若きリーダー。 大胆な発想と実践で介護現場から圧倒的な支持を集めている。


職員がやさしいから機械浴!?

最近、腹がたつことがありました。 見学に来ていた施設の職員さんが、懇親会で「7つのゼロ、いいですね」と言ったあとに、「うちはオムツの人も機械浴の人もけっこういるんです。でも職員がやさしく接しているので、オムツでも機械浴でもいいのかなって思うんですよ」と言うのです。 さんざん、7つのゼロについて話したあとに、そんな話をされて私は少々イラッとしました。 でも大人ですから、一応確認したんです。 「その方に、一定期間オムツではない・機械浴ではない生活をしてもらったうえで、やはりその方にはオムツ・機械浴のほうがいいということになったわけなんですね?」 「あ、それはしていません」 「はぁっ!? やってないのに、なぜオムツや機械浴のほうがいいと思ったんですかぁ?」 だんだん口調が強くなってきます。 「そのおばあちゃんは、普段から『私はオムツでいいよ』って言ってるんです。うちの職員はやさしいからそのおばあちゃん自体には悲壮感はないんです」 「いやいや、それは『私はもうオムツでいい』という言葉を引き出すような介護をしているということなんじゃないですか!?」 飲み会の席がピリピリしてきます。 その人は、少し沈黙したあと、「でも、うちの職員はすごくやさしいんですよ」 「はぁ!? さっきからあなたやさしい、やさしいと言ってますけど、やさしく接するのは大前提であって、もちろんそれに越したことはないけど、だからオムツでいいとか、だから機械浴でいいとか、そこ関係ないんじゃないの!? オムツをしない、普通のお風呂に入るということが当たり前なわけで、そこに近づけていくのが介護の役割なわけで、それをしないで『オムツでもいいよね』って判断するのはおかしくないですかぁ!! おむつや機械浴にしておいて何がやさしいだ!!」 場が凍りつきました(笑)。

駒場苑の改革

「総合ケアセンター駒場苑」は、入居55人、ショート2人の特養ホームです。 1989年に建てられた施設なので、もうボロボロの施設です。 1989年から2010年までは、ごくごく普通の特養ホームでした。 ほとんどの人がオムツで、お風呂もプールのようなお風呂とリフト浴と特浴でした。 お風呂は1日で一気に入れてしまうという感じ。 ありがちなケアをしていたと思います。 私は2010年に入職したのですが、その頃でもベッド柵に手首を縛る拘束をしていました。 2009年に当時の施設長が三好さんの講演を聴いて「ルネッサンスプロジェクト」を立ち上げたのが改革の始まりです。 ただ、現場からの反発が大きくて、改革は進みませんでした。 私はその頃、横浜の特養ホームで働いていたのですが、三好さんの講演会の懇親会で駒場苑の職員と話す機会があって、もめていることを聞いたんですね。 これはぜひ行ってみたいと思って、翌月に入職しました。 私は怒りが原動力なんです。 Mだという噂もありますけど(笑)。 たくさんのいじめに遭いながら、「7つのゼロ」を介護方針として掲げ、実践してきました。今日は、入浴に特化してお話しします。

次回:介護現場から—駒場苑の入浴改革②


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