介護情報誌「Bricolage」(七七舎)2018年新年号に掲載された「機械浴0ゼロの介護術(三好春樹)」全文をご紹介します!


「機械浴を止めよう」と訴えてきた。 でも「それは無理だ」という反応・反発がほとんどだ。 特に、特養ホームからは「要介護4や5の人をどうやって家庭用の風呂に入れるのですか?」と質問される。 しかし、その特養ホームで実際に特浴が不要、もしくはほとんど使われないという状況は、古くは広島の誠和園、新しくは東京の駒場苑など多くの現場で実現されている。 しかし、それでも「介護が大変じゃないか」と心配する人が多い。さらに、機械浴メーカーの営業が「機械なしでは腰を痛めています」なんて噂を流したりもしている。 しかし実際は逆だ。介助量は大幅に減る。 本誌に掲載した誠和園でのデータを見てもらえば反論の余地はない。(本誌8ページ資料参照) もちろんそのためには、ちゃんとした介助技術が必要だ。 私は現在『老人介護、基本のき』という半日のセミナー実技でこれを伝えている。 ぜひ受講してほしいが、受講できない人のために、何とかその技術を文章で表してみたい。(拙著『介護技術学』雲母書房 参照)

浴槽から出るコツは立ち上がりに

ここでは、いちばん難しいと思われている浴槽から出る方法について述べることとする。 なにしろ、浴槽の後ろから、老人の両脇をかかえて真上に引っ張り上げるなんていう介助(いやこれは介助とは呼べない、力任せ、あるいは無茶苦茶と言うべきだろう)が行われているのだから。 これでは介護者は腰を痛め、老人も嫌がり、自立から遠ざけられてしまう。 浴槽から出るという動きの基本は、イスやベッドからの立ちあがりである。 立ちあがりの自立の条件が3つある。

<立ち上がりの条件>

①前かがみ(頭の中心が足より前)になる これは、体重を乗せる足より前に頭、後ろにお尻がくることで前後バランスをとるためだ。 動きは筋力ではなくてバランス力なのだから。

②足を引く 理由は①と同じだ。 足を引くほど、前かがみを恐がる人でも前後バランスがとりやすい。 マヒした足が前に出てはいないか注意。

③イスのシート(ベッド)の高さ 病院のベッドのように高すぎては足が下せないし、低すぎては力が余計に必要となる。 一人ひとりの力と下腿の長さで、立ちやすい高さを個別に決めなければならない。

この「イスからの立ちあがり」の応用問題が、「浴槽からの出方」となる。 でも、条件③は最悪ではないか。なにしろ浴槽の底にお尻がついているのだから、高さは0センチだ。

でもあきらめない。3条件のうち、まだ2つも残っているのだから。 まず、足を引こう。片足だけでいい。左足がおすすめだが、マヒがあれば健側をいっぱいに引く。(図1)

図1 足を引く 片足を引いて前傾姿勢をとってもらう。介助者は腰を両側からはさむようにして介助する

次に前かがみだ。湯船の中で前かがみになれるよう、手を前に出し、湯船の縁のできるだけ遠い部分をつかむ。(図2)

図2 浴槽からの出方 前方水平位にある浴槽の縁(ここでは介助者の手)に手を伸ばすと、もうお尻は浮こうとしている 『生活リハビリ講座シリーズ4 介護技術学』(雲母書房刊)より

このとき手はほぼ水平位になっているはずだ。 L字手すりを持つと、ななめ上を持つことになるが、これでは立てない。 前後バランスがとれていないからだ。 この2つの条件を満たせば、もうお尻は浮こうとしているから、介護者は外から両手を浴槽に入れ、老人のお尻をはさむようにして、ちょっと前に押し出すだけでいい。 上に持ちあげる必要はない。するとお尻は浮いてくるから、そのお尻を、浴槽と同じ高さ洗い台に誘導すればいいのだ。

生活行為を介護技術に

立ちあがりの介助と同じで、持ち上げるという介助は必要ない。 「ノーリフト」という運動があって、何かと思ったら「リフトを使おう」というものだったのには驚いた。 人がリフトしないために機械のリフトを使おうと言っているらしいが、そもそも生理学に基づいた介助なら「リフト」なんかする必要はないのだ。 つまり機械のリフトも「ノーリフト」ですむのである。

この自立=介助法、空の浴槽でやってみて、「でも難しい!」と思ったあなた。大丈夫。 浴槽にお湯を入れてやってみてほしい。 お尻は簡単に浮いて、ほとんど介助は不要になる。 なぜなら、浮力が効いて、体重は首から上だけの7分の1になるからだ。 この方法、じつは、私たちが毎日湯船から出ているやり方と一緒なのだ。 さあ、今夜、湯船から出る動作を自己観察してみよう。 ちゃんと足を引き、手を前に出して湯船のフチを持って出ているはずだ。 無意識にやっている生活行為を意識化する、それが介護技術だ。


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