先日スタートした新たな企画、「カイゴ録」✨ さまざまな現場でご活躍される多種多様な介護職の方に、ただひたすらインタビューします。

Nさんの「カイゴ録」、今回は中編。 介護観が変わったNさんが、その後どんな風に現場で奮闘したのか、インタビューしていきます!

Nさんのプロフィール

Nさん

Nさん
介護現場に勤めて約20年。現在は首都圏の特別養護老人ホームに勤務

自己紹介


■生理学の視点からの介護

けあ子

けあ子

前回は、現場でのがむしゃらな奮闘から、悩み・葛藤を経て、大きく考えを変えられた経緯を教えて頂きました。いまNさんがご尽力されている取り組みを是非教えてください⭐️

Nさん

Nさん
はい。移乗と誕生日会の2つですね。

けあ子

けあ子
まずは移乗のことから教えてください😄

Nさん
前回のお話で、いろいろなセミナーに参加し始めるまでを、お話しました。色々と参加する中で、下山名月さんのセミナーがフィットして、多く参加するようになりました。
下山さんは、「座る」ことを大事にしています。車椅子は椅子ではなく、移動の道具なので、長時間座っていることに適していないし、落下しないよう少し前面が高くなっているので、食事姿勢(足を床について前かがみ)としてふさわしくないことは知られていますが、椅子に座り替えて食事をしている施設は多いとは言えません。座り替えているとしても、椅子の差し替えだったり、持ち上げたり吊り下げたりする介助法だったりするところが多いかと思います。普段車椅子を使用しているADLの方に、「ちょっと立ってて」と差し替えることは転倒のリスクがあるし、持ち上げる介助はその人のできることを奪ったり、生理学的な動き、できることを引き出していない。なので、「移乗」の介助法を研修では徹底してやっています。

けあ子

けあ子
なるほど💦

Nさん

Nさん
単に介助技術だけではなく、その人にあった環境を整えること、手の位置、足の位置、目線によって「立つ」という動作が変わる。座面をしっかりさせることや、手すりの高さなど、できないと思っていたのは、環境が悪かった、工夫が足りなかったのだということ、そして何より、お年寄りからできることを奪わない、できることをやっていただくには、「待つ」ことも大事だということを気づかされます。

下山さんの研修に通い始めた頃の職場では、椅子に座り替える(誤嚥を予防する)ことは理解してもらえたのですが、安全な移乗方法の習得の必要性を広めることが自分には難しく、研修で今の職場の方と知り合って、下山さんをアドバイザーにして新しい取り組みを始めようとしていることを知り、思い切って転勤しました。

けあ子

けあ子
そうなのですね✨転勤先ではいかがでしたか?⭐️

Nさん
とはいえ、その施設でも始まったばかりでした。座り替えにかかる時間、お年寄りの自発的な動きを引き出すための「待つ」時間が、忙しい現場で、「こんなことやってられない!」になる。声掛けひとつ、手をつく位置一つで自力で立てる方を、持ち上げてしまう。介助に工夫が必要で、技術を求められる方だと、自身の未熟さに不安もあって、「よっこいしょ」と持ち上げてしまうんです。そして腰が痛いと嘆く。できることを引き出して自身の力を使っていただければ、介助者も楽なのに。

けあ子

けあ子
なるほど…

Nさん

Nさん
このスピード重視の現場は、確かに業務に追われて忙しいのだけれど、「〇時までに終わらせないと他職員ににらまれる」という恐怖心に近い気遣いによるものも大きいと思いました。業務がどんなに遅れてもいいと思っているわけではないのですが(というより、他の方へ関わる時間が少なくなることはマイナスかもしれません)お年寄りの主体的な動きを引き出すために待つ時間や、安全に食事をとっていただくための環境作りに時間をとられることをよしとするには、理解とチームワークの構築、あわせて業務の整理が必要だと考えるようになりました。

けあ子

けあ子
そうですね… 人の意識って簡単に変わるものではないですもんね。

Nさん
はい、そう思います。
少し話がそれますが、何回も訴えがあるお年寄りに対応して時間を取られ、業務が回らなかった場合などにも、「何ゆっくりやってるの?」ではなく、「何かあったの?」「「振り回されちゃったんだね」「あとはまかせて!」などと言い合える雰囲気が作れるかどうかも大事だと思いました。 自分は今の職場に転勤して、「生理学的な視点をもって介護技術を身につけて、介護をしたい」と思っていたつもりでしたが、半年ほどたったころ、技術以前にチームワーク、同じ方向をむいて進んでいける仲間がほしかったんだということに気づいたんです。これは永遠の課題かもしれません。

けあ子

けあ子
ありがとうございます😄よくわかりました✨


■毎日の移乗を「よっこいしょ」とやるか、生活の中でのリハビリとできるか

Nさん

Nさん
食事、排泄、入浴が三大介護ですが、三大介護に絶対に付き纏うのが「移乗」です。これを含めて四大介護と、今の職場では言っています。1日に20回くらいは「移乗」が発生します。その20回を「よっこいしょ」とやるか、生活の中でのリハビリとなるように立ち上がりの練習にできるか、それを大事にしたいと思っています。

よっこいしょ

けあ子

けあ子
そういうことなんですね😄

Nさん
車椅子に乗っている姿勢は、食事の姿勢ではありません。「その乗り換えをする時間がない」という声があるかもしれませんが、「それにこそ時間を使わないで、何に時間を使うの?」ということです。慣れて当たり前になってくれば、そういう声もなくなります。今の現場は、そんな感じにだんだんとなってきました。

けあ子

けあ子
すばらしいですね⭐️

Nさん

Nさん
でも、もちろん課題もあります。今は、月2回同じ内容で、1回あたり1.5時間程度、生活リハビリに関するミーティングをしています。「なぜそれをやるのか?」の意義付けを含めて、半分は座学、半分は技術の習得です。担当しているのは、下山さんに限らず、介助法の研修に今までに自主的に通って技術面に優れている職員です。自分はサブリーダーで勤務表を作らせていただいているので、その時間を勤務表に組み込んでいます。そうして、少しずつ考え方や技術を浸透させていく、それを施設全体に広げていく、というのは、まだまだこれからですね。

Nさんの「カイゴ録」、中編はここまでです。介護観が変わったNさんがどんな風に現場で奮闘したのか、「移乗」へのこだわりを話して頂きました。
次回の後編では、Nさんのもう一つのこだわりについてインタビューしていきます。✨