前回の記事では、実務者研修で面接授業(スクーリング)が義務付けられている『介護過程Ⅲ』について見てみました。要約すると、介護過程Ⅲは「通信教育などで学んだ他の科目の知識や技術を総動員して、実際に根拠ある専門的介護をリスクを抑え、家族や他職種、他機関と連携して実践できる力を身に付けること」がそのねらいでした。 それでは、通信教育がほとんど認められている実務者研修において、なぜ「介護過程Ⅲ」はスクーリングが義務付けられているのか。そこから介護業界におけるキャリアを考えていきたいと思います。

介護福祉士に求められる役割に戻る 先月「介護福祉士に求められる役割 後編」の記事で介護福祉士に求められる役割や期待されることについて書きました。それを要約すると下記の通りです。

【求められる力】 ・チームマネジメント能力 ・対象者の生活を地域で支えるための実践力 ・介護課程の実践力 ・認知症ケアの実践力 ・介護と医療の連携を踏まえた実践力

【求められる役割】 アクティブシニアや外国人の方々など、介護業界は多様な人材が入職してきます。中には専門教育を十分受けていない人、健康面や生活面に課題を抱える人、また切り分けられた業務の一部を担う人など実に様々です。 そうした多様な人材をまとめて、複雑多様化する介護ニーズに応えるチームの中核人材になるのが介護福祉士。

いかがでしょうか。何かこれまでの記事の流れが一本の流れに収斂していく感じがしないでしょうか。

介護福祉士は単なるステップアップではなくて、今後の日本の介護現場においては、多様な人材をまとめていく力と、チームで質の高い介護を実践する力が求められるのです。 その中核的な力が実は「介護過程」であり、その中でも、知識や技術を総動員した実践的な力を学ぶのが「介護過程Ⅲ」なのです。 だからこそ、介護過程Ⅲだけは通信教育ではなく、スクーリングによって丁寧に学ぶべきものとされているのです。

どのようなキャリアを描くか 介護業界は、他産業と異なり、介護保険制度など国や自治体の方針や計画、そして法律に則る準公共的産業です。財源も多くが税金や保険料などの公的なお金です。 したがって、介護職や介護業界の行く末は、ある程度国が示しています。つまり、その方向性をきちんと抑えて、自分がその大きな流れの中で、どのように生きていくか、働いていくか、キャリアを積んでいくかをある程度予測することが可能なのです。

実務者研修の位置付けとねらい、そしてその先にある介護福祉士に求められていること。これらを改めて考えると、研修や資格制度は考えられて設計されているものだとも言えるのではないでしょうか。

実務者研修を単に、介護福祉士を受けるための条件だから修了しなくてはならない、と受身的に捉える人と、「介護福祉士実務者研修」で狙いとされていることを踏まえて、介護福祉士に求められる役割を意識して、そのような人材になるべく研鑽していくというスタンスの人では、キャリアにおいても差が開いていくかもしれません。

介護職は、以前と比べて、きちんと求められていることに沿って頑張り、キャリアを積んでいく人には道が拓けるように制度が整備されてきています。 ぜひ、社会や制度の流れをきちんと抑えながら、介護業界でのキャリアアップを目指して欲しいと思います。

今回の記事はここまでです。