前回の記事までで、ヘルパーの処遇改善が進められてきたこと、しかしヘルパー自身も専門性を高めていく必要があること、そして介護事業所・企業間での競争が激しくなってきていることについて見ていきました。

今回の記事では、ヘルパーと介護職に関連する資格研修制度の変遷を見ていきたいと思います。業界人でも混乱する介護関連の資格研修制度を抑えることで、自身のキャリアアップを俯瞰していけるようにしましょう。

<介護従事者の資格体系の変遷>

 下記の図をご覧ください。こちらは「介護職員基礎研修」という資格研修制度ができたときに厚生労働省から出された同研修のパンフレット内の図です。平成20(2008)年の頃ですね。



 そして、次の図は10年後の平成30(2018)年3月30日付で厚生労働省 社会・援護局 福祉基盤課長通知に基づく「介護に関する入門的研修について」の資料になります。



2008年の頃は資格もシンプルに初級レベルから国家資格まで4段階ですが、10年後には5段階になっていますね。しかも、10年で変わらないのは「介護福祉士」だけです。いかにこの10年で介護に関する資格研修体系が移り変わっているかがわかると思います。

ではまず、両方の図か資格研修制度の変化を見ていきましょう。

介護保険制度前後は多くの介護職や訪問介護従事者を養成する必要がありましたから、日本各地で訪問介護員3級、2級の研修が行われました。また、ステップアップとして訪問介護員1級を取得する方もいました。ただ、2級から一気に介護福祉士になる人がほとんどで、1級は訪問介護事業所に勤めるサービス提供責任者など一部の方が取得することが多かったです。

さて、この訪問介護員○級と言う資格研修制度ですが、訪問介護に従事しない人も介護の登竜門的に取得していったのですが、名称にもある通り、「訪問介護員」の資格なのです。ご存知の通り、介護保険制度の中で、唯一資格が必要なのが訪問介護です。それ以外のデイサービスやグループホーム、特養などでは無資格でも働くことが可能です。それなのに、登竜門の資格が「訪問介護員」というのは変ですよね。

ということで、施設、在宅を問わない介護福祉士へ続く手前の専門的研修として「介護職員“基礎研修”」が出来たのです。

もちろん“基礎研修”が出来たのは、名称が実態に合っていないという理由だけではありません。国家資格である介護福祉士は、専門学校などの養成校を卒業する『養成校ルート』以外には、3年の現場経験と国家試験に合格すれば取得できるという『実務経験ルート』があります。

当時、実務経験ルートは、現場経験3年と国家試験合格ができればOKでしたので、悪い見方をすれば、国家資格に見合う体系的な学習をしていなくても国家資格が取れるという状態だったのです。現在も介護福祉士の過半数が実務経験ルートで国家資格を取得していますので、「それでは専門性を担保した国家資格と言えない」という危機感から「実務経験ルートも“基礎研修”という体系的な学習機会を設けよう」となったのです。

今回の記事はここまでです。次回はこの続きになります。後編では2008年の資格研修制度から現在の資格研修制度への移り変わりを見ていきます。

参考引用 介護職員基礎研修パンフレット https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/02/dl/s0227-8aq.pdf 介護に関する入門的研修について https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000465981.pdf