前回の記事では、「日本標準職業分類」の改定の変遷の中で、訪問介護従事者がどのような変化を辿ったかを見ていきました。そのルーツは家政婦さんやお手伝いさんとしての位置付けであり、専門職ではなく、ずっと「サービス職業従事者」として歩んできたということでした。

今回は訪問介護従事者以外の介護職員(施設などで働く介護職)の変遷を見ていきたいと思います。

さて、いきなりですが、昭和35年3月設定(1960)と昭和45年3月改定(1970)では介護職員に該当する職業は見当たりませんでした。

社会福祉專門職業として、障害や保育など福祉関係の施設に従事する職業はあるのですが、まだ公式に高齢者への支援が福祉業として行われていない時代で、基本は家族が見るものだったということが伺えますね。

昭和54年12月改定(1979)には「A:専門的・技術的職業従事者」の中の「14:その他の専門職・技術的職業従事者」に「141:寮母(老人福祉施設、母子寮等)」という職業が位置付けられていました。

昔の介護職は「寮母(男性は寮父)」と呼ばれていたんですね。看護婦、保母と合わせて、女性の漢字が当てられていることに時代を感じますね。

とはいえ、この時代は老人福祉施設で働く寮母は專門的・技術的職業従事者に位置付けられていたということが画期的ですね。

昭和61年6月改定(1986)も前回の昭和54年と同じく「A:専門的・技術的職業従事者」「07:社会福祉専門職業従事者」「074:福祉施設寮母・寮父」=母子寮、身体障害者福祉施設、老人福祉施設等において、更生・介護の業務に従事するものをいう。

このように位置付けられていました。

ちなみに同じ「社会福祉專門職業従事者」の中には「072:福祉施設指導専門員」として「老人福祉施設長・生活指導員」=児童福祉施設、身体障害者福祉施設、老人福祉施設等の福祉施設において、専門的な保護、救護、援護、育成、介護の指導の仕事に従事するものをいう。

このような職業も位置付けられており、これは今の特別養護老人ホームなどの施設長や生活相談員を指しているものと思われます。

介護保険制度開始を前にした平成9年12月改定(1997)では前回の昭和61年と同じく「A:専門的・技術的職業従事者」「12:社会福祉専門職業従事者」「124:福祉施設寮母・寮父」が位置付けられています。

ところが、介護保険制度が始まった後の平成21年12月改定(2009)には「E:サービス職業従事者」「36:介護サービス職業従事者」「361:介護職員(医療・福祉施設等)(1997年改定の専門職としての福祉寮母・寮父のうち、老人福祉分野を分割して新設)」

=医療施設、福祉施設、老人福祉施設等において入所者及び通所者に対する入浴、排せ つ、食事等の介護の仕事に従事するものをいう。

このように、ずっと「専門的・技術的職業従事者」として位置付けられていた「福祉施設寮母・寮父」が「サービス職業従事者」として「介護職員」に変更されたのですね。

訪問介護従事者と異なり、介護職員は介護保険制度前まではずっと「專門的・技術的職業従事者」として位置付けられていたのに、介護保険制度後に変わってしまった。

介護保険制度前後で色々なことがあったと想像できますね。

確かに、今でも介護施設では、法人内で研究大会が開かれたり、介護福祉士養成校で介護福祉士のカリキュラムを納めた卒業生が訪問介護よりも就職することが多いなど、專門的職業の名残が残っている気もしますね。

とはいえ、公的には異なる位置付けがされている介護職員は今後どうあるべきかを考えていくヒントにもなりそうですね。

最期に余談ですが、介護支援専門員(ケアマネジャー)は平成21年12月改定(2009)の中では「B:専門的・技術的職業従事者」「16:社会福祉専門職業従事者」「169:その他の社会福祉専門職業従事者」の中に位置付けられていました。

今回で、日本の介護従事者である、介護職員と訪問介護従事者の職業的位置付けの歴史的変遷について見ていくことは終わりになります。