【髙口光子さんに聞く 介護現場の〝今〟とこれから 】#4 介護職のストレス

Bricolage（ブリコラージュ）2016夏号 に掲載された「髙口光子さんに聞く　介護現場の 〝今〟とこれから」を、全5回の記事で紹介します。

前回：#3 管理者の役割

2005年、石川県でグループホーム職員による虐待致死事件が起きました。『あれは自分ではなかったか』（ブリコラージュ刊・2005年）は、その事件を受けて緊急開催したセミナーを収録したものです。あれから10年、介護現場は変わったでしょうか。『あれは自分ではなかったか』セミナーで講師を務めた高口光子さんにうかがいました。

—世間が思う介護ストレスと介護職が感じるストレスは、どのようにちがうのでしょうか。

　世間が思っている介護のストレスとは、たとえば、便をさわらなければならないとか、大きな人を抱えなければならないとか、唾を吐かれるとか、給与が安いとかでしょう。 でも、そんなことはストレスではないですね。 私たちは、便を拭き取ってきれいにしたときの爽快感、唾を吐いていたばあちゃんの「ありがとうな」を知っていますから。

　人は思い通りにならないし、思い通りにしてはいけないのですが、人を思い通りにしたくなるのが介護現場です。 お年寄りのことを思って食べてほしいと思っているのは自分だけど、最終的に食べるか。食べないかはお年寄り自身だとわかっているつもりの私が、次第にお年寄りを自分の思い通りに食べさせようとしている自分になっている。

　こうなると、自分のやっていることの意味がわからなくなる。 これが介護職のストレスです。 それを言葉で表現できたり、相談できると「そうか、あせらなくてよかったんだ」と思えるのですが、その場がないとどんどん追いつめられていきます。

次回：#5 介護現場が10年で学んだこと

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