介護現場のハラスメントについて、厚生労働省で『介護現場におけるハラスメント対策マニュアル』が掲載されています。 今回の記事では、調査から見えてきた、介護現場におけるハラスメントの実態と影響についてみていきたいと思います。

介護現場のハラスメントの実態

実態については、「介護現場におけるハラスメントに関する調査研究事業実態調査」の結果からになります。

図表1

介護現場の職員で利用者からハラスメント(身体、精神、セクハラ)を受けた人の割合は約4〜7割、家族等からは約1〜3割という結果になっています。このように多くの現場で何らかのハラスメントを受けている職員がいるということになります。

次に、ハラスメントの内容の割合についてです。この1年での割合なので現場に勤め始めてからの過去全てを含めるともっと割合は上がるでしょう。 在宅系では精神的暴力(脅すような言動等)が多く、施設系では身体的暴力が多くなっているようです。また、セクハラはどの事業形態でも3割以上であり、訪問看護では5割が経験があるとの結果です。

図表2

いかがでしょうか。皆さんの経験則と比べて多いでしょうか、少ないでしょうか。

私の経験をお話しすると、この業界に入りたての頃、認知症状態にある男性利用者から杖でこめかみを強く殴打された経験があります。かけていたメガネが吹っ飛び、不意打ちだったので手で防御なども出来なかったのでその場に倒れてしまいました。 また、ある女性利用者からは、服の上から何度も下半身を触られるということがありました。ご本人は認知症状態ではありませんでした。悪ふざけのような、コミュニケーションという感じだったと思います。

もし私がこの調査に回答する立場になった時、上記のような経験をハラスメントだと回答しないかもしれません。それは主観によるものです。これはケアの対象であり、私たちの支援が未熟だと考えてしまうからです。ただ、この考えが正しいわけでも間違っているわけでもありません。職員の経験、育成背景、ご性格、チーム状況などによっても感じ方が違うかもしれません。ですから人によってはもちろんハラスメント経験だと回答するかもしれません。この線引きの難しさがハラスメントの難しさに直結しているとえるでしょう。皆さんのご経験ではいかがでしょうか。

このように、ハラスメントの調査自体も、回答する現場職の主観等によって回答にバラツキが出てきそうだという前提で捉えてみてください。また、セクシュアルハラスメントに関しては、男性よりも女性が回答した方が割合が高くなることは想像に難くありません。 調査の結果をそのまま受け取るのではなく、ご自身の経験や社会常識と照らし合わせながら、一つの指標として捉えていただけたらと思います。

介護現場のハラスメントの影響

こうしたハラスメントによって現場ではどのような影響が現れているでしょうか。 下記の表では、実際にハラスメントによって怪我や病気になった、仕事を辞めたいと思った職員の割合が示されています。

図表3

この他、実態調査では実際に仕事を辞めた方の割合も示されており平均で約7%ほどの方が辞めているようです。事業によっては10%以上の事業もあり、人材不足にある介護現場において1割程度の人がハラスメントで退職しているというのは少なくないインパクトではないでしょうか。また、仕事を辞めてはいなくても、辞めたいと思った職員が、職場や会社の対応によっては失望して、後々辞めてしまうことも考えられるでしょう。

このように、介護現場におけるハラスメントの影響は看過できない課題と言えるまでになってきているということですね。 こうした対策をしっかりしている職場とそうでない職場は、今後働く職員にとって職場を選ぶ上での大きなポイントの一つになってきそうですね。