介護福祉士がその支援の対象とするのは、病気や障害、加齢によって日常生活に支障がある人たちです。ですから、大きくいうと障害者、障害児、難病患者、要介護者、要支援者、最近では要介護予備軍である虚弱高齢者等までがその対象と言えるかもしれません。

そして、特に最近では介護=高齢者支援と捉えられるほどその役割の多くが、要介護高齢者の支援と捉えられ、その比重が増しています。 そのような中、介護の国家資格である介護福祉士は、その求められる役割は年々変化してきています。

それではその求められる役割がどのように変化してきているかをみていきたいと思います。

<老人福祉法の時代> 1963年に老人福祉法というものができました。当時の法律が対象としているのは、高齢者全般ではありますが、実際には身寄りがいなかったり、生活困窮にある高齢者が中心でした。 今でも、老人福祉法に位置付けられている各種介護サービスの内容としては「入浴、排せつ、食事等の介護、その他の日常生活上の援助」といった言葉が各所に書かれています。つまり、3大介護(入浴、排せつ、食事)を通じた日常生活における支援が求められていたのです。 言うなれば「3大介護を主とした身の回りのお世話」です。

<社会福祉士及び介護福祉士法> 1987年には社会福祉士及び介護福祉士法が制定され、介護福祉士が行う介護が明文化されました。そこでは「入浴、排せつ、食事その他の介護等を行うことを業とする者」と老人福祉法の流れを汲む形になっていました。 この定義は2007年の同法改正まで続いており、約20年間介護福祉士=介護の仕事は「3大介護を主とした身の回りのお世話」ということになり、実際的にも世間一般のイメージ的にもこれが定着していったと思われます。

<社会福祉基礎構造改革、介護保険制度> 介護を担う人材である介護福祉士の役割は固まったままでしたが、介護福祉士を取り巻く社会や福祉のあり方という環境については1990年代から2000年前半にかけて大きな変化が起きました。 それまでの福祉は「一部の可哀想な人たちに、公費を中心として、施される」という位置付けのものでした。 しかし、それが「福祉を必要とする誰もが、公平に、また福祉サービスを利用する主体者として負担に応じながら利用するもの」という形に変化したのです。これは言葉にするとサラッとしていますが、とても大きな改革でした。

社会福祉基礎構造改革のビフォーアフターを並べると以下のようなイメージです。

①可哀想な人に福祉を与えてあげる→福祉サービスの利用者とサービス提供者は対等 ②福祉、医療、介護などを別々に縦割りで提供→必要に応じた総合的支援として提供 ③公共的なやや硬直化したサービス→多様な法人が競争しサービスの質を高め合う ④施設や隔離、隠す支援→在宅、地域で同じ社会の構成員として共に支え合う

といった形です。

こうした流れを受けて、「自立支援」「尊厳の保持」「個別支援」「権利擁護」「心理面へのケア」などの理念も合わせて、主として高齢者を想定した介護保険制度が、従来型福祉を変える制度として誕生したのです。

環境が大きく変革したことを受けて、介護福祉に求められる役割も大きく変化していくことになります。そこから現在に至るまでの10数年間で、さらに介護福祉士に求められる役割が変化していきます。

そちらは次回で。

中編に続きます)