■高齢者施設の看護師の仕事は面白い

編集部:今日は宜しくお願い致します。 松永 :宜しくお願い致します。

編集部:松永さんは看護師ということですが、介護施設での看護と介護については、連携の課題などをよく耳にします。はちす苑ではいかがでしょうか? 松永 :良く耳にしますよね(笑)。はちす苑では、まず「看護師も現場に入ってください」と伝えています。まずは現場に入って「処置をする」「情報を得る」。そうすると現場での関係値が出来てきます。家族が来た時も「介護については介護職」「医療については看護師が説明します」と言っています。介護職の人が忙しい時に、見守りを看護師にやってもらったりもしてますね。

編集部:すばらしいですね。 松永 :何かあれば現場にいく、という方針です。介護職員との間の溝もない、と認識しています。何か あっても看護師に相談してくれる形になっていますね!

編集部:これまでの蓄積でそうなっているのでしょうね。 松永 :わたし自身も、 自分の目で見たり、現場に行って話を聞いたりすることを心がけて来ました。「普段のその人の状態を把握しよう」と伝えています。

編集部:よくわかりました。一般的には看護師の方が介護施設で働きたいというのはあまり多くないということも耳にしています。看護師の方にとっての、介護施設で働く魅力は、どんなものだと思いますか? 松永 :そうですね。私自身、最初のイメージは、高齢者の施設は楽なイメージでした。ですが、実際に中に入ってみて、病院よりも大変と感じましたね。医療関係者が看護師しかおらず、利用者の状態の把握・予測を、常に看護師が判断しなければなりません。 いま病院に行く必要があるのか?という判断が必要ですが、その元になる経験もなければ、判断もできません。

編集部:確かにそうですね・・・。 松永 :それでも最初の大変さを乗り越えて、10年以上やってきた中で、病院以上に、高齢者を人として見ることが出来ているという実感があります。

編集部:なるほど。 松永 :また、高齢者の方に起こり得る今後を予測・判断した、という経験に自信が持てるようになりました。そして、終末期の対応にこそ、そういった経験が生かされたり、高齢者施設ならでの仕事が合ったと感じています。

編集部:そうなんですね。どういうことでしょうか? 松永 :最後を施設で迎えられることが大事と考えて、着任当初は経験値として2人ほどしか施設としていなかったのですが、これまで累計で100人以上を看取って来ました。最初は病院の感覚でしかないので、最後まで点滴だったり、細い血管にいかに点滴を打つか?とか、口腔内が吸引で血まみれになったりする、ということもありました。今では何もせず、穏やかに、最期を、いい形で迎えて貰える様な環境を作れています。

編集部:すばらしい変化ですね。 松永 :「看護師の方にとって、介護施設で働く魅力」というテーマに戻りますが、やはりなかなか魅力を感じられていないのかなと思います。わたしも最初はそうでした。ですが、いろいろな疾患を持った人がいる中で、医師との連携が重要です。今は嘱託医がいて、24時間連絡可能です。LINEで相談したり。オンコール看護師が対応できない場合は、グループLINEで相談し、判断の責任を、一人の看護師におわせすぎないようにしています。

編集部:そうなんですね。 松永 :病院は、医師の判断の通りにいかにやるか、でしたが、病院とは違います。1つ1つの医療処置はそこまで難しくないかもしれませんが、先を読まなければいけない、という仕事で、そこが重要です。そしてチームでそれをやっていく必要があります。なので、勉強する必要があります。私自身だいぶ勉強しました(笑)。自分で一生懸命して考えて、職員を指導するという魅力もあると思います。「自分のためだけではなく、他の人にどう伝えるか?を考える」「新しいことを勉強する」「今までにないことを勉強する」「せざるを得ない状況になる」これらを通じて、今まで見えてこなかったものも見える様になります。

編集部:なるほど 松永 :家族対応にも入っていく必要がありますね。ターミナル期は、家族も含めてケアしていく必要があります。ずっと学習していく面白さがあるんです。なので、 病院はもう戻らないですね(笑)。

■伸び代もまだまだ多い

編集部:松永さんご自身が「高齢者施設の看護師の仕事に多くの魅力を感じている」ことがビシビシ伝わって来ました!続いて、はちす苑の今について伺いたいと思います。施設長も含めて、これまでと今のはちす苑のすばらしい点を多く伺って来ました。その中で、松永さんから見た課題をうかがえたらと思います。 松永 :まず現状、個別ケアが出来ていると思います。 利用者目線の介護ができているのではないでしょうか。時間もかけられています。他の施設よりも、介護職の人数が多いです。そういった中で、例えばトイレに連れていく際も、コールがなってすぐに行けなかったり、1人に対して時間もかかり過ぎていたりと、理想とするところまで、到達していないという面はあるかなと思います

編集部:なるほど・・・! 松永 :もう少しどこか業務を減らす必要があるかもとは思います。もちろん他の施設と比較するとよくやっていると思います。繰り返しですが、介護職員と看護師の関係性ができていて、連携が取れていますので。

編集部:長く現場を良く見てこられた松永さんだからこその課題提起ですね。「もう少しどこか業務を減らす必要があるかも」ということでしたが、具体的にはどのあたりが、あり得るのでしょうか? 松永 :10時と15時のお茶でしょうか。今は「外に行きたい」という時に付いて行ってあげられる余裕も少なかったり、散歩にもなかなか行けないという面もあります。個人個人で好みは違うので、大変ですが、一律ルーティンをやらない、というのも一つですね。

編集部:なるほど。 松永 :会議が多いので、短縮していくことも必要かなと思いますね。あとはPCでの記録時間なども負担を軽くできるかもしれません。もっと普段の生活に目を向けられる状態を作れると良いですね!「今日は暑いので、もっと薄着にしよう」とかの服の調整だったり、寒い日に窓を開けて、窓を開けっぱなしにしない様にするとか、です。業務の立て直しが必要かもしれません。

編集部:具体的でよくわかりました。松永さん自身はそういった部分に今後も関わっていくのですか? 松永 :看護主任は引退していますので、次の主任に課題を伝え、育てていく段階になりました。わたし自身は、施設のことを、外部・地域の方に理解してもらう役割かなと思っています。例えば、地域の方に門を開いていて、ショートステイやデイサービスの利用者ご家族が困ったときに、相談の電話が来たりします。また、利用者していない人でも可能な限りサポートしたいと考えています。こういう活動をしていると地域に伝えていき、地域の人に見てもらいたいですね。

編集部:課題は認識しながら、これまでの様に直接解決するために動くというよりは、後任の方にその役割を譲りながら関わっていくということですね!とても大事な役割だと感じました。

■人の話が聴ける人が、時間がかかってもはちす苑で頑張れている

編集部:そんな松永さんから見て、はちす苑に合う方はどんな方だと思いますか? 松永 :「人の話を傾聴できる人」ですね。そんな人は長続きもしています。まずは時間が掛かっても、相手の声を聞き、利用者個人の状態・情報を得られる人です。そういう人は見ていて穏やかな人が多い感じがしますね。

編集部:そうなのですね。 松永 :昔、茶髪で挨拶もできず、入った3日目の会議中に寝ていた職員がいました。今は中心となって活躍中です(笑)。そんな形で、育てられる環境があると思います。きちんとしたマニュアルがありつつ、それにそって教えていくことが根付いています。各主任が、個性に合った育て方・指導ができていますね。施設長も、相談に乗ってくれるし、パッと動いてくれます。

編集部:よくわかりました。最後に言い残したことがあれば、お願いいたします。 松永 :介護職員の精神的な相談ごとは、看護師がよくのっています。真剣に話を聞いています。そう入ったこともあって、 働きやすいと思っていますね。上との関係性、横との関係性がちゃんとできています

編集部:なるほど! 松永 :今後は地域の看護師との連携を取っていきたいですね。認定看護師の方が大学病院から来て、研修をやっていますし、今後は、褥瘡の認定看護師の方もきます。そんな連携進めつつ、今後はターミナル期を経験した家族の声を聞き、振り返りをして今後にいかせる様にと思っています。お看取り後の数ヶ月経ったあとの声を訊こうという会です。「最期はちす苑でよかった」という言葉を聴けるように頑張っているし、これから看取りに注力していきます。ありがとうございました!

編集部:ありがとうございました。