機械浴ゼロなんて言うと、賛否両論出ますが、私が知る限り、機械浴を設置している介護事業所で、機械浴を「適正に」使っている所はゼロです。誤解のないように言うと、私は機械浴を全否定してる訳ではありません。「本当に」それがどうしても必要な人にだけ使うなら使っても良いと思っています。しかし現実は、機械浴を置くと、必ず機械浴でなくても良い人まで、機械浴に入れるという事態が発生します。「適正に」機械浴を使うのではなく、「楽だから」機械浴を使う人が出てきてしまうのです。すると、機械浴でなくても良い人まで機械浴に入れ始めるのです。私はそうなるくらいなら、置かない方が良いと思っています。

私が関わる特養での、のんびり湯、ゆったり湯があれば、基本的に機械浴じゃなくてもどんな人も入る事が出来るから、そうだとしたら、無駄に不要な人まで機械浴に入れてしまうという事態が起きるくらいなら、のんびり湯とゆったり湯を設置して、機械浴はゼロの方が良い、という考えです。この浴槽はリハビリデザイン研究所という会社が取り扱っています。

①のんびり湯

②ゆったり湯

その他にも機械浴のデメリットは結構あります。

 まず、機械浴をメインにフル活用している施設は重度化が早い、という事です。機械浴は体をほとんど動かさずにお風呂に入れる、という点では便利と言えるかもしれません。しかし、介護施設に入居している人のほとんどは、体の一部は動かせる人です。自分で動かせるのであれば、出来るだけその力を使ってもらう事で、身体の機能を落とさずに、重度化を防いだり、遅らせる事が出来ます。

それが認知症の進行を遅らせる事は言うまでもありません。自分で体を一部洗える人、自分で座りながらなら浴槽をまたげる人、自分で頭を洗える人、自分で湯船の座る位置を調整出来る人等、たくさんいるのに、機械浴になった時点で、そのすべての動作が不要になります。一見、楽に思えますが、日常的に動かせるのに、動かさない入浴を繰り返した結果、その動かせる力は失われ、動かせなくなります。そしてそれに付随して全身の力は失われていきます。

高齢になると動く機会が減るからこそ、動く時は動かないと、動く事すら出来なくなってしまうのです。だから、個浴をメインにフル活用している施設は、自分で出来る動きは、自分でしてもらえるようになり、重度化が遅いです。亡くなるギリギリまで、自発的な動きが少しでも出来る人も増えます。その方が結局、介護職の負担も減るのです。よく機械浴ないんじゃ、職員は腰痛とか大変でしょう、と言われますが、機械浴使ってても、半数以上が腰痛になっています。むしろ機械浴で重度化を早め、寝たきりオムツになった方が腰を痛めると考えます。

 2つ目は、単純に怖いという事です。リフトで宙を浮いている時間や、特浴の狭いストレッチャーで高い位置でお尻を洗うために横を向かされる時等、怖くて、叫んだり、不安な言動をする人は多いです。ましてや状況がよく分かっていない認知症の人達にとっては、非常に怖い動作や姿勢が多いです。そうゆう入浴の場合、お風呂の日の夜は落ち着かなくなってしまう事も多いです。認知症の人達は、今まで長い間してきた生活習慣が精神的土台になっています。座ってご飯を食べる、トイレに座って排泄をする、普通のお風呂で入浴する事、については落ち着かなくなる事は最小限に済みます。

逆に寝てる姿勢でご飯を食べたり、オムツの中に寝ながら排泄をしたり、機械のお風呂で座った事ないマシーンで入浴したり、する事には不安は大きく、その時やその後に落ち着かなくなってしまう事が多いです。認知症がかなり進んでいても、普通のお風呂だと体が覚えていて、桶で自分でお湯をかけ始めたり、昔こんな風に体を洗っていたんだな、という動きをしてこちらが感動する事もあります。

 また機械浴は単価が非常に高いので、施設に置くには限りが出てくるので、個数は少なくなる。すると1つの機械浴に対してそれを使う利用者は多くなってしまい、その結果1日に入浴をする人数が増えて、時間がキツキツになり、結局バタバタした急かすような入浴になってしまいます。

普通のお風呂では、機械浴1台分で、ひのき浴槽なら3槽以上、普通の浴槽なら6槽以上は設置出来る。浴槽が増えれば使う浴槽が被らずに分散されるので、1人当りの入浴時間が何倍にもなる。例えば、私が関わっている施設では、18人に対して1つのひのき浴槽を使えるため、週2回の入浴をする場合、1日に6人入浴すれば、3日で全員入れて、週2回入る事が出来る。

さらに、午前中、午後にその6人を分ける事で、9:30〜11:00の間に2人、14:00〜17:00の間に4人入れば良いので、1人45分は好きに入る事が出来るようになります。そうなると分業入浴介助をする必要はなくなり、マンツーマン入浴が可能になります。マンツーマン入浴になると、介助をする側に一定の責任感が生まれて、移乗や対応が丁寧になります。その責任感が、プレッシャーになりすぎない程度の45分間という余裕ある入浴時間。この45分間を経験していく事で、介護職は自然と成長をしていきます。逆に機械浴で分業でやっていたら、少々雑に介助をしても紛れてしまいます。責任感も生まれづらいないので、対応も雑になったり、乱暴になったりすることもあるでしょう。また機械浴で分業でやっていると、工場のベルトコンベア作業となり、そこに流れてくるのは、人ではなく物と脳が認識するようにさえなる可能性があります。

その物が非効率な動きや抵抗をしたりすると、それは許されない行為となり、不適切な言動や虐待に発展する事さえあります。45分のマンツーマン入浴をする事で、そこにいるのは物ではなく人と捉えられる様になります。人と認識する事で、不適切な言動や虐待は減ります。人間は自分がされたり、した行動で意識が作られていきます。

その他にもこのマンツーマンの45分間は、普通の業務では出来ない、貴重なコミュニケーションの時間になります。このマンツーマンのコミュニケーションの中で、その人が何が好きで何が嫌いなのか、昔どんな事をやっていたのか、行きたい場所はどこか等、その人の個別の情報を知って、今後のケアに活かされるきっかけになります。コミュニケーションの時間を大事にしたい、とか、コミュニケーションの時間がなかなかとれない、ならお風呂でゆっくりマンツーマンで関われる環境を作る事で、解決出来るのです。

浴槽の出入りの技術に関してはあまりふれないでおきます。今、普通のお風呂で入るための浴槽の出入りの技術はいろいろ開発されているし、書籍化もされています。ただ、個人的には、利用者の力とお風呂の浮力を最大限活かす、という事だけしっかりやっていれば、浴槽の出入りは1人介助でも一部2人介助でも良いと思っています。逆にその技術にこだわり過ぎて、その技術が出来る職員、出来ない職員にわかれてしまい、それが原因で、普通のお風呂で入れる人が減ってしまったら本末転倒だからです。

余談ではありますが、そうゆう意味ではこのかまぼこ型クッションもオススメです。

これは全く足に力が入らない人のお尻を洗う時に使うもので、1人が完全に抱え上げている間にもう1人がお尻を洗って流す、という利用者、介護職双方にとって負担の大きいお尻を洗う介助をなくすために使われます。利用者はシャワーチェアに座ったままで、このかまぼこ型クッションを大腿の下に入れます。

入れた状態でその利用者を前かがみにすると、テコの原理でお尻が自然に上がるので、その上がったお尻を介護職は洗えば良いのです。お互いにとって楽な方法です。このかまぼこ型クッションは、柔らか過ぎると潰れてしまいお尻が上がらないし、硬すぎると痛いです。ちょうど良い柔らかさの物が、このクッションです。

これはオアシスという会社のヨガマットで使う枕です。このかまぼこ型クッションを見学者に説明するとその後にメールで買いました、という連絡が来る事が多いです。だいぶこのかまぼこ型クッションの販売には貢献しているはずです(笑)。しかし、まさかこのヨガマットの枕が、介護現場のお尻を洗うのに使われているとはオアシスさんも知らないでしょう。

このように、利用者の活かしつつ、難しいところはお互いに負担のない誰もが出来るやり方を探していくのも楽しみの1つになります。