■試して、待って、利用者のスイッチを見つける

編集部:本日はよみうりランド花ハウスの主任、小林真二さんにお話を伺います。どうぞよろしくお願いいたします。 小林 :よろしくお願いいたします!

編集部:早速ですが、よみうりランド花ハウスに入った経緯を教えてください。 小林 :はい。元々は自営業だったのですが、母が要介護状態になったことや、仕事上の環境変化を理由に、ヘルパー2級の研修を受けました。よみうりランド花ハウスは広告を見て応募した形です。最初は土日の週2のみだったのですが、自営業の収入も不安定だったことや、介護の仕事にやりがいを感じるようになったため、程なくしてフルタイム勤務となりました。今ではすでに14年目ですね。

編集部:ありがとうございます。始めた当初は介護についてどんなイメージを持たれていましたか? 小林 :家で母を診ていた時と施設の違いを感じました。施設にはいろんな人がいて、すべてが「なるほど」「難しい」・・という感じでした(笑)。当時、初めてお会いする利用者の方に「こんにちは」と普通に声かけただけで、「何言ってんだ」と怒られました・・・。ショックでしたが、初めての方なりの声かけがあったなと、今では思います(笑)

編集部:そうだったんですね(笑)

小林さん

編集部:先ほど「やりがい」という言葉がありましたが、どういった点でそれを感じましたか? 小林 :はい。食事がなかなか取れない人に対して、出し方やタイミングを工夫することにより、食べられるようになったり、話せなかった人が、話せるようになったり、そういった時に感じますね。もちろん単純に元気な人と仲良くなったり、ということも1つですが、相手ができないことが、できるようになったり・・・そして、それは自分も同じです。利用者の方を導いたり、利用者の方に導いて頂いたり。正確にはできないというよりは、できていたことを忘れてしまったということなので、それを思い出してもらうサポートという感じですね。

編集部:なるほど。 小林 :そして、そうなって欲しいけど、無理にはしない、ということですね。待つというか、合わせるというか。例えば定食のような食事が出るときに、それをまとめて、ぼんっと出しても食べないということがありました。では、それを一つずつ出すのか?プレートとしてまとめて出すのか?など、何通りか出し方があります。スプーンを持って頂くだけでも、食べ始めたりします。

編集部:そうなんですか。 小林 :はい。最近入った方で、食事を取るのが、かなり難しい方がいました。「どうぞ」と食事を出すと食べるのですが、 ずっともぐもぐして、どうやら飲み込むのが辛そうだということがわかりました。飲み込まないので、半分も食べないという感じです。そこで座って待ちながら、お茶を置いておいたら、その方がコップを持ちました。持っているのをずっと見ていたら、口に持っていき始めたんです。「食べられるかも」とスタッフみんなで話しました。そこでスプーンを手に持っていただいたら、 口に持っていき始めた・・・という感じでした。

編集部:そうなんですね・・・! 小林 :ちょっとしたきっかけで、変化があります。食べられないと思っていても、食べられるようになります。

編集部:どこにスイッチがあるかわからないという感じなんですね。 小林 :まさしくそんな感じでした。

小林さん

■利用者に合わせていくというのが基本。利用者に合わせないと意味がない

編集部:よくわかりました。今のエピソードにも表れていましたが、よみうりランド花ハウスでは個別ケアに注力していると、坂口介護長や蒲倉副主任から伺っています。これがどういう背景で成り立っているのか?ぜひ、考えを伺いたいと思っています。 小林:そうですね・・・難しいですが・・利用者に合わせていくというのが基本です。みんなにはそのように伝えています。スタッフの勤務状況に合わせるのではないです。「シフトが終わるまでに、〇〇を終わらせる」というのはよくある話ですが、利用者がしたいようにして頂きます。12時にお昼ご飯でなくても良いですし。

編集部:そうですね。 小林 :よく寝坊される利用者の方がいます。朝食に起きてくれることもあるし、そうじゃないこともあります。それも含めて「利用者に合わせよう」と。むしろ「利用者に合わせないと意味がない」と思っています。トイレに行く時間は人によって違います。「いまトイレの時間ですよ」と言っても、出る人出ない人、両方いますよね。なので、そもそもこちらの都合でやっても意味がないと、施設としてわかっている、ということでしょうか。

編集部:なるほど〜。 小林 :実践を通じて、そのようにできています。結果、考え方をそのまま施設の中で引き継いでいけている、ということでしょうか。「この時間までにこれをこなす」のような作業的な発想にならなければ、「本来の楽しみ」を感じてやっていけるのではないかと考えています。24時間365日稼働しているので、「〇〇までにやらなくては」などと無理に仕事を終わらせる必要はないですよね。

編集部:確かにそうですね。 小林 :これはチームの連携が良いことも要因です。個人では絶対に無理ですよね。よみうりランド花ハウスはユニットケアを行っており、通常はユニット単位で仕事をしますが、今は2ユニットが連携しながら仕事をしており、そういった点も要因かもしれません。

小林さん

■相手に関心を持てる人

編集部:素晴らしいです。そういったことは、新しく入られる方にも伝えられているのですね。 小林 :そうですね。新人への教育でも「個人個人を知っていただくこと」を伝えています。「まずは利用者について知ってください」ということで、記録やカルテなどを見ていただきます。そして、個別で支援の仕方が違う様子を見てもらいながら「なんでこうやっているの?」という点を知って頂きます。

編集部:そうなんですね。理想的だとは思いますが、余裕がないとなかなかできないですよね。 小林 :教える期間が長いのも特徴でしょうか。派遣職員の方にも同様のプロセスをとるのですが「こんなに長く教えてもらえることはない」というコメントもありました(笑)正直、余力はありませんが、作業的にやっても意味がないので、「ずっと働いてもらいたい」と思って、時間をかけて指導していますね。

編集部:なるほど。 小林 :もちろん、教えている人に残業は発生してしまいます。ですが、周りの職員の理解もあるので、先行投資と思って時間をかけています。スタートは、利用者の方とのコミュニケーションを見せながら、やってもらいながら・・一つ一つの支援は、利用者によって違うということを感じて頂きます。

編集部:ありがとうございます。よみうりランド花ハウスの個別ケアがどう行われているのか、その一端を垣間見れました。最後に、そういった個別ケアを実践するよみうりランド花ハウスに合っている人はどんな方だと思われるか、伺えればと思います。 小林:そうですね・・・すべての人とコミュニケーションが取れる人、でしょうか。その人を知ろうとする人というか。そうすることで、輪が生まれます。あとは、高齢者の方が好きな人ですかね。高齢者の方の行動 / 認知症の方の不思議な行動にも、それを「えっ」と思わず、面白いなと思ってもらえる人というか。そういった状況で、柔軟性な対応ができる方ですね!

編集部:なるほど。相手の方に、興味や関心を持てる方、ということですね。よくわかりました。ありがとうございました! 小林 :まさしくその通りです!わたし40才を超えてからの介護職デビューなので、年齢関係なく、興味があれば、ぜひ来てほしいと思います。 ありがとうございました!

小林さん