■よみうりランド花ハウスの考える「個別ケア」

編集部:今日は介護長である坂口さんにお話を聞きます。どうぞ宜しくお願い致します。

坂口 :宜しくお願い致します!

編集部:早速ですが、まずはよみうりランド花ハウスに入った経緯を伺えますか?

坂口 :はい。わたしは介護福祉士の専門学校に20年前に入りました。その後、新卒で病院にて3年介護職として勤務したのち、オープニングスタッフのチラシを見て、よみうりランド花ハウスに入りました。

編集部:ありがとうございます。それではすでに15年以上勤務されているという事ですね。

坂口 :そうなりますね(笑)。最初に入った病院では、多くの患者さんの死に直面しました。その経験から、「死」という段階のもっと手前、生活の場に携わりたい、と感じていたのが、特別養護老人ホームに関心を持った理由です。

編集部:そうだったのですね。

坂口 :よみうりランド花ハウスは、川崎市で初めてのユニット型の特別養護老人ホームでした。それらがあって、開設1年前の段階にて、入職した形です。

編集部:ありがとうございます。当時はどのような状況でしたか?

坂口 :ユニットごとで対応の仕方はバラバラで、利用者中心ではなく、それぞれが動いている状態でした。

編集部:なるほど。

坂口 :自分自身も当初はその1人として、自分がよいと思う介護をやっている形ではありましたが。

編集部:ありがとうございます。そこから年月が経ち、今は介護長として、どういった介護に取り組まれてきましたか?

坂口 :はい。2010年12月から介護長として携わっているので、もう10年近くになります。介護長になって最初に、よみうりランド花ハウスの「ケアの考え方」「スローガン・モットー」をみんなで作り上げたいと考えました。それは、ご家族や職員間でも伝えられるような柱を作りたい、ということです。

編集部:はい。

坂口 :それを現場から意見を貰いつつ、作り上げました。現在は「ケア部の指針」として掲げています。基本的には「相手の気持ちを知り、何を必要としているのかを探り、実践する」ということです。

編集部:素晴らしいですね。よみうりランド花ハウスは人数も多く、1つの方針を浸透していくのは大変難しいと思いますが、工夫されていることはありますか?

坂口 :入職後の新人研修で伝えています。日々の現場では「利用者を知って」とよく言ってますね(笑)。オムツを早く交換するなどは、後から付いてきます。ですので、「利用者を知って」を強調することも心掛けています。

編集部:徹底されていますね。

坂口 :一緒にみんなで考えてきたこともあり、以前よりはだいぶ浸透してきたと思います。また折に触れて、介護主任にきちんと伝えています。役職会議で、何かの問題について議論することもあります。その際には、あえて指針に立ち返って話をすることもあります。

■「看取りケアは、日々のケアと一緒」 ーいま出来ることをやる

編集部:ありがとうございました。今の話にも関連しますが、施設の特徴としては、どういったものが挙げられますか?

坂口 :1つは看取りケアです。ここは施設の考え方が現れるところです。私たちは指針の通り「個別ケア」を目指していますが、「看取りケアは、日々のケアと一緒」と考えて取り組んでいます。

編集部:どういうことでしょうか?

坂口 :その方の状態が変化すれば、その人に合わせたケアを行う、というのは、日々のケアと一緒です。家族の意向を確認しながら、看取りの期間でもお風呂にも入れます。食事のタイミングでも、食べたいときに、食べられるだけの食事を、提供します。家族にも協力してもらい、御本人の好きな物を持って来てもらうこともあります。いつそれが最期の食事になるかわからないからです。

編集部:なるほど。

坂口 :そうして看取りに向き合う中で、看取りではない人も、看取りの人も、考え方は一緒だと感じるようになりました。

編集部:素晴らしいです。よみうりランド花ハウスは看取りへの取り組みも早かったと伺っています。

坂口 :そうですね。わたしが当時いたフロアは、重症の方が多く、看取りをやっていないころは、最期を迎えるにあたり、救急で搬送する状況がありました。現場としても、ご本人やご家族からも、よみうりランド花ハウスで最期を迎えることはできないのか?と言われていました。現場では問題意識が高まっていましたが、体制がなく、出来なかった状況です。

編集部:はい。

坂口 :そこで当時の施設長が、看取りをやってくれる医師を探してきました。こうして、ご利用者とご家族の声、職員の声から、実現に至った形です。いざやるとなった段階では、「亡くなる瞬間までみなければ」という想いと、「現実できないよね」というはざまでの意見が出ていました。

編集部:はい。

坂口 :最終的には、亡くなるその瞬間より、「亡くなるまでが大事」だと気づきました。何かご利用者の方にできることはないか?という問題意識の中で、自分たちに出来ることは「いま」だと気づいたということです。

編集部:よくわかりました。看取り以外では、どういった取組がありますか?

坂口 :いまはコロナの影響を受けていますが、「小規模単位でのイベント」も特徴です。ここも介護長になって変えてきた点です。以前は、大きなイベントを一律でやるようにしていたのですが、利用者の目線に立った時に、必ずしもそれが望ましいわけではないと感じました。

編集部:はい。

坂口 :好き嫌いは人それぞれで、歌やレクリエーションが好きな人もいれば、そうではない人もいる。そう思うように至り、ユニットやフロア単位で楽しめる行事をやろうということで、5年前くらいから取り組んでいます。

編集部:そうなのですね。

坂口 :そのイベントは、職員からの企画をベースに取り組んでいます。直近1年間だと120の企画が上がりました。3日に1日くらいは、何らかの取組がなされている形です。具体的には、映画館に連れていったり、巨人軍の試合を見に行ったり、最近だとお寿司食べたいといわれたら出前を取ったり。その方が、最期までその施設にいる前提で、亡くなるまでの間、「お家のように感じられるケアを実現しよう」とした結果、このようになっています。

編集部:ありがとうございます。全てケア部の指針から一貫しているということがよく分かりました。

坂口 :ありがとうございます。

■ケア部の方針に共感してくれる人へ

編集部:少し話は変わりますが、そうしたよみうりランド花ハウスは、働く人にとって、どんな良さがある施設でしょうか?

坂口 :そうですね。今はコロナの影響で実施できていませんが、研修には注力していました。基本を大事にした研修です。日々当たり前のようにやっていることは、少しずつぶれてきてしまう可能性があるので、見直す機会として研修を位置付けています。

編集部:なるほど。

坂口 :他の点でいえば、離職率の低さ、でしょうか。平均だと15%くらいかと思いますが、よみうりランド花ハウスは10%以下(直近7年の平均)です。長く勤めている職員も多いです。

編集部:そうなのですね!その理由や背景はどういったものが考えられますか?

坂口 :そうですね・・・残業は発生しますが、残業代をしっかりと払う体制があります。有休消化率も60%で、一定水準以上をキープできています。

編集部:はい。

坂口 :何より、職場の雰囲気として、穏やかな職員が多いところが大きいように感じます。働きやすい・相談しやすい環境を作ろう、ということで、「風通しをよくしよう」と、よく主任とも話しています。新人でも意見しやすく、先ほどのイベントの企画でも、新人の意見が通ることが、普通に起こっています。

編集部:そうなんですね。

坂口 :そういった協力しやすい雰囲気づくりやぎすぎすしてなさ、が定着につながっている気がします。

編集部:そうすると来ていただきたい職員像としても、同じような雰囲気の方ですか?

坂口 :そうですね。もちろん前提として「ケア部の方針」への共感は必須です。利用者のことをちゃんと考えて、お年寄りを敬う人であることは大事です。人のために何かしてあげたい、と考える人が、結果として定着して、活躍しているように思います。

編集部:なるほど。

坂口 :先ほどの雰囲気に関連して言うと、タイプとしては「ばしばしやるタイプ」というよりは「助け合ってチームワークでやろう」というタイプの方でしょうか。

編集部:ありがとうございます。ケア部の方針・施設の特徴/実態・来ていただきたい人物像が一貫していて、とてもわかりやすかったです。最後に、今後こう言った施設を目指したいという点を教えてください。

坂口 :やはり、もっともっと良いケアを目指していきたいです。そのために、人員の充実が必要になります。私たちは未経験の方も、OJT期間を長くとり、しっかりと育てます。是非私たちの施設の方針に共感する方、お越しください!

編集部:ありがとうございました!