■かすみの里は、自分たちの施設だけではなく、福祉・介護業界全体の発展を考えている

編集部:今日は、大平さんにインタビューをします。どうぞ宜しくお願い致します。 大平 :宜しくお願い致します!

編集部:まず、簡単に自己紹介をお願いします。 大平 :はい。まず普通高校を卒業時に就職するということで、かすみの里に来ました。今は新卒の1年目です。

編集部:高校卒業して間も無いんですね! 大平 :そうですね(笑)。

編集部:高校卒業後にそのまま入社された方をインタビューするのは初めてです!かすみの里はどういう経緯で入職することになったのですか? 大平 :介護で就職することを決めて、永甲会を見学しようと、姉妹施設のうねめの里に行きました。他の施設も見ていましたが、その見学の時に、他の施設には無い温かさを感じました。そして、自分たちの施設だけではなく、福祉の過去を話してくれたんです。自分たちの施設の発展だけではなく、福祉・介護の発展を考えているという点に惹かれました。

編集部:そうだったのですね!他の施設とは違ったんですね。 大平 :うねめの里では、利用者と職員が身近な距離で、家族感を感じました。それまでのイメージは、介護といえば、病院っぽい感じのイメージで、他の施設はそんな雰囲気のところもありました。うねめの里は、家っぽい感じがして、「里人さん」と呼んでいるというのもよかったです。

編集部:よくわかりました・・!大平さんは、そもそも介護の世界になぜ進もうと思ったのですか?高校卒業してそのまま、というのは珍しいですよね。 大平 :中学生の時に、家で祖母を見ていて、ショートステイに時折預けていました。その時、祖母に対して自分は何もできずに、亡くなった後で後悔しました。祖父はまだ健在なのですが、そういう時に「プロとして関われるようになりたい」という思いが募りました。

編集部:なるほど。そういうきっかけがあったんですね。周りで同じような選択をされる方はいましたか? 大平 :卒業して、そのまま就職先が介護というのは自分だけでした。専門学校に行くという同級生はいましたが。自分の場合は、仮に進学するという場合は、家庭の事情的に、自分でお金を貯める必要があったので難しいと思ったのと、就職して現場に出てしまった方が、多く得られそうだと思い、就職することにしました。

編集部:考えられた末の結論だったのですね。周りはどういう反応でしたか? 大平 :介護業界の人間は家族の中でも初めてでしたが、家族は「やってこい!」という感じでした(笑)。先生は「大平なら大丈夫だろう」と言ってましたね。友人からも「似合っている」という声でした。

編集部:みなさん後押ししてくれたんですね! 大平 :そうですね!

■里人さんは衰えていくだけではなく、老いとともに進化できる

編集部:ありがとうございます。よくわかりました。普通高校から直接の入職ということで、入る前に不安とかはなかったのですか? 大平 :知識がない状態で来たことへの不安はありました。事前研修も1週間受けましたが、その知識だけでは足りないと感じており、そのまま介護のプロとして4月から立ったことを考えた時に「できるのかな?」と思っているところはありましたね。

編集部:そうですよね。入ってからは、実際どうだったでしたか? 大平 :最初は皿洗いからスタートして、それでも周りの先輩がサポートしてくれたことで、徐々にステップしていった感じでした。少しずつ不安がなくなっていき、過ごしやすかったという感じでした。普通の高校から、直で就職した人もいたことなんかも、その要因だったと思います。

編集部:なるほど〜。最初の仕事は皿洗いだったんですね! 大平 :そうですね(笑)。皿洗いから始まり、洗濯、ケアを間近で見る・・・など、介護以外で、できることをやる感じでした。徐々に里人さんと話したり、関係を作るようになるなど、業務が変わり、成長していかなければいけない感覚はありましたね。おむつ交換、食事介助、お風呂の介助とか、1つずつ丁寧に、という感じです。夜勤もまだこれからですね。

編集部:ありがとうございます。全く介護に触れたことがない中で、この間、利用者の方とはどんな感じだったのですか? 大平 :当初、里人さんと職員の間には壁がある、そういう関係性があると勝手にイメージしていました。ですが、それはこっちが感じているだけで、それを決めるのは我々ではないということに、接する中で気付きました。

編集部:なるほど・・。 大平 :高齢になり、体が動かなくなったりして、「限界があるのでは?」と。「立てない」し、「トイレにも座れない」と思っていました。何より、一度そうなったら、そのままだと思っていたんです。ですが、実際は「サポートすれば、できることを発見できます」。やろうと思ったことはできてしまいます。体の限界があったとしてもサポートすればできます。衰えていくだけではなく、老いとともに進化できる。そういった発見があるので、里人さんを尊敬する毎日です。

編集部:おお。それは素晴らしいです・・!! 大平 :立てない人が立てる様になったり。食事を十分にできなかった人が、パンをつかんで食べるようになったり。元々、食べられていた人が、食べられなくなり、また食べることができるようになる・・・そんな発見があります。  

■里人さんの限界は介護職が決めない。常日頃から里人さんの癖を見て、少しでもサポートする

編集部:素晴らしい捉え方です。大平さんがそう考えられるのはどうしてなんでしょうか? 大平 :「こちらの考えで決めない」ことですね。「この人はこれができないので、やめておきましょう」ではなく、限界を決めない。「少しでもサポートできるようにする」と考えているから・・・でしょうか。

編集部:なるほど〜。素晴らしいです・・。そのために工夫していることとかあるんですか? 大平 :常日頃から癖を見るようにしています。「どういう感じで立とうとしているんだろう」と普段から見ておけば、立とうとしている時に「今行けば立てる」というその瞬間を見逃さなくなります。いま立とうとしている時に、腰を少しだけサポートすることで、すっと立てます。そんな少しの気づきを大事にしています。忙しいとできない時もあるので、それは悔しいです。

編集部:本当に素晴らしいと思うのですが、これは簡単ではないと思います。大平さんがそれを出来ているのは、どうしてだと思われますか? 大平 :先輩から教わる中で、気づく時もあります。こういったことを考えることが、自分にとって介護の普通になっていますね。永甲会の考えが、自分のスタートだったということが大きいです

編集部:よくわかりました。すごく良い話でした。 大平 :ありがとうございます(笑)。

編集部:話は変わりますが、そんな大平さんから見た、かすみの里の良い点と、改善した方がよい点を伺えますか? 大平 :はい。良い点は、冒頭でもお伝えした様に、温かい雰囲気、里人さんと職員の関係性ができている点ですね。見てわかります。1人1人の職員が、安心して任せられる関係性を利用者と築けています。

編集部:なるほど。 大平 :里人さんメインで動いている職員が多いですね。里人さんが何かしたい、という時に、動けている感じです。

編集部:これまでのお話から、それはよく伝わってきました。改善した方がよい点はどうでしょう? 大平 :裏返しですが、里人さんメインで考えすぎてしまう、ということでしょうか。「自分のことを考えられない人が結構いる」と奥田さん(施設長補佐)が言っています。介護職 (注:永甲会では介護職を「生活支援員と呼んでいますが、この記事では「介護職」と表記します) の自分が、何かしようとしていた時に、「里人さんがいまこれがしたい」となると、それを優先してしまいます。毎回それがあると、本来やらなければいけないことが後回しになる、ということが時折あります。

編集部:なるほど〜。その逆はよく聞きますが、かすみの里では、そこが課題として挙がるんですね・・。 大平 :そうですね(笑)。次の職員が申し送りして、やれば良いということではあるとは思っていますが。

■介護はきつい中でも、楽しさ・癒しがある

編集部:ありがとうございました。とても話を聞いていて勉強になりました。最後に、業界全体について、思うことがあれば、是非伺ってみたいと思います。

大平 :介護の仕事って、1つの仕事を同じことをやっていくだけではないですよね。毎日違います。里人さんによって違いますし、同じ方でも気分によって違います。ジャンルがたくさんあり、その1つ1つに人材が必要です。

編集部:そうですね。 大平 :どうしてもまだ介護は、病院のようなイメージをもたれてしまうことが多いです。介護は、病院における病院と患者さんのような関係性ではありません。きついイメージがあり、それは事実な面もありますが、きつい中でも、楽しさ・癒しがあることをわかってもらいたいです。介護全体としてそういうアピールをしたいと考えています。この分野に人材が必要になるのは間違いなので、アピールができていないと、偏見で、介護を仕事に選ばないと言う人が多くなります。1つ1つ施設としてだけではなく、全体で、ということが大事だと思っていますね。

編集部:本当にそうですね。 大平 :偏見を突破する方法としては、SNSの力と思っています。Instagramで、ありのままの現場を発信し、見た人がびっくりということがありました。SNSを通じて、少しずつ楽しい、というのをアピールして、こんな幸せな顔をするんだというのを、里人さん・職員ともに見せていけば、結果、偏見がなくなっていくはずです。

編集部:確かにそうですね。そこまで考えられていることにも驚きでした。今日は本当にありがとうございました! 大平 :ありがとうございました!