前回の記事では、「介護福祉士」という国家資格に求められる役割や取り巻く環境がどのように変化してきたかということについて見ていきました。

今回は、介護福祉士が制度化されてからこれまでで最も大きな改正が行われた2007年の改正について見ていきましょう。

2007年に「社会福祉士及び介護福祉士法」が改正されました。ここでは大きく以下の3つがポイントです。

①介護福祉士が行う「介護」の定義の見直し 改正前:「専門的知識・技術をもって、入浴、排せつ、食事その他の介護等を行うことを業とする者」 改正後:「専門的知識・技術をもって、心身の状況に応じた介護等を行うことを業とする者」 この背景には、それまでの三大介護に加えて、特に認知症の方への支援が求められるようになってきたことがあると言われています。つまり、身体や心の状況に応じた総合的な介護を柔軟にその人に合わせて提供する、つまり自律的な専門職であることが求められたと言えます。

②介護福祉士の義務規定の見直し 改正前:『信用失墜行為の禁止』『秘密保持義務』『主として医療職との連携』 改正後:『誠実義務』=“個人の尊厳を保持し”その有する能力及び適正に応じ“自立した日常生活を営むことができるよう”、常にそのものの立場に立って、誠実にその業務を行わなければならない。

『信用失墜行為の禁止』『秘密保持義務』 『連携』=“認知症であること等の心身の状況その他の状況に応じて”(中略)“福祉サービスを提供する者または医師その他の保健医療サービスを提供する者その他の関係者との連携”を保たなければならない 『資質向上の責務』=介護等に関する“知識及び技能の向上”に努めなければならない この変更ポイントからも、単に「これはやってはダメ、これはやりなさい」という義務規定から、「自分で考えて、研鑽し、他職種や多様な機関などと連携する自律的な専門職になりなさい」というものに変わったと言えます。

③要請カリキュラムの見直し(実際の変更は2009年4月から) 改正前のカリキュラムでは、「老人福祉論」「障害者福祉論」「リハビリテーション論」「社会福祉援助技術」「レクリエーション活動法」「家政学概論」「医学一般」「形態別介護技術」と言った、福祉や医療などの各論を集めたカリキュラムに身体介護のための介護技術や実習を含めた構成でした。 これが改正後は、「人間と社会」「介護」「こころとからだのしくみ」という介護実践ができる自律的な介護福祉の専門職として軸を定め、介護福祉士として必要な力を身に着けるためのカリキュラムに変更されました。 特に、ケアマネジャーによるケアマネジメント、看護師による看護過程と同様に、「アセスメント、計画、実施、評価」というPDCAサイクルで根拠を持った介護を実践する力である『介護過程』が独立した科目となりました。加えて、他職種との連携や本人中心の考え方を育み生活モデルを実践するためのICF(国際生活機能分類)が導入されたことは画期的でありました。

こうした大きな改正は、今現在の介護福祉士においても大事な軸として継承されています。そして、下記の介護福祉士の『資格取得時の達成目標』と『求められる介護福祉士像』が掲げられ、介護福祉士に求められることの大枠が示されたのです。

今日の記事はここまでになります。次回は、令和の現在に介護福祉士に求められることについて見ていきたいと思います。

参考 『社会福祉士及び介護福祉士法等の一部を改正する法律案について』 https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/166-13a.pdf

『介護福祉士養成課程における教育カリキュラムの見直しについて』 https://www.wam.go.jp/wamappl/bb05Kaig.nsf/0/3889fb5d2fc57af14925771200257f24/$FILE/20100427_1shiryou2_2.pdf